NFTで変わるのか?NFTによる「関係性の革命」 〜一人一人のデータ主権〜
ブロックチェーン技術で構成されたNFTは情報の役割と価値を変え、人と物、人と組織、人と人の関係を変え、人々の意識と行動を変容させていく可能性をもっています。画期的な発明であるNFTを、「関係性の革命」を実現していく社会技術として捉えてくことが求められています。
伝えたいことNFTは「関係性の革命」につながる「ソーシャルOS」としての意義と可能性をもっている。
NFTとその基盤技術であるブロックチェーンは、ビジネスの手法・手段にとどまらず社会そのものに影響を与え、根本から変革していく OS(オペレーティングシステム)と理解することができます。
一方で社会への導入が始まったばかりの現段階ではアプリケーション(活用法)が少なく、「関係性の革命」をもたらすOSとしての全体像がつかみづらい状況です。適用領域を広げ、試行錯誤を重ねながら、新しいOSの社会実装を進めていく必要があります。
4つの革命領域
情報の信頼性
分散型台帳技術とも言われるブロックチェーンは、情報ブロックを鎖のようにつなぎ合わせ、多くの参加者が同じデータを分散させて蓄積する仕組みです。
ブロックチェーンにおいてはデータを改ざんするには新しいデータを全て改変しなければならないことから、外部からの改ざんに対する耐性が強い仕組みとされています。そうした特性が情報信頼性の担保と、ブロックチェーンが書き込まれたNFT(非代替性トークン)の応用可能性につながっています。
情報の非対称性
分散型台帳技術であるブロックチェーンは、情報の不変性と透明性が保証されることで、従来の中央集権型のシステムに代わる新たな信頼の仕組みを創造することが可能です。
中央集権型システムでは「情報の非対称性」(「中央に全ての情報が集中し、末端からのアクセスができない」「ある人が知っていることを、別の人は知らない」という状況)があり、不公平性、不明朗性、非効率性、不正の温床になっていました。
取引の信頼関係
これまで社会全体でみると、情報は行政にせよ企業にせよ中央集権的に管理されてきました。しかし、ブロックチェーン技術の登場により、情報にアクセスできる人や組織が分散化され、より透明性の高い情報共有が可能になりました。
唯一無二の情報が書き込まれたNFTを、信頼・真正の証としてデジタル創作物や通常の商品・サービスにと紐付けることで、企業と顧客の信頼関係を生み出し、新たなレベルに引き上げることが可能になりました。
デジタル保有権
NFTはデジタルデータに唯一無二の価値を与える技術です。
ビフォーNFTにおいては、情報はコピー可能で不安定な存在でしたが、NFTによって一般の商品(もの)と同様の価値を与えることが可能となり、デジタルアートや音楽などのデジタルコンテンツがフィジカルな商品と同様に取引・所有ができるようになりました。
新たな関係性
上のような変化を背景にNFTは次のような関係性を生み出し、社会の新たなOSとして機能していくことが期待されます。
分散・自律そして直結
NFTに体化されたブロックチェーン技術を活用することで、中央集権的な組織や情報ルートを介さずに、個人同士が直接つながり、取引を行うようになりました。これまでの「C」(customer)はマーケティングの視点から、マスとして捉えられる中央集権的なアプローチ対象でしかありませんでした。けれども情報の透明性が高まり、情報の非対称性が解消されるとともに、自律した活動主体としての「P」(person)に変貌していく可能性が開けてきました。
NFTプロジェクトにおいては、プロジェクトの趣旨や目的に賛同しNFTを購入した人が、横につながりあい、コミュニティとしての発展をめざすものが少なくありません。「C」から変貌した「P」は person(人)から peer(仲間)に進化していく可能性をもっています。
オープンイノベーション
分散、自律、人と人の直結という大きな変化の中では、組織の構造が水平化・フラット化し、柔軟性と協調性が高まることが期待されます。従来の社会では情報の非対称性が強く、人、もの、組織の関係性は固定化しがちでしたが、今後はより流動的かつダイナミックな関係性へと変化していくと考えられます。ブロックチェーンとNFTを活用して運営される分散型自律組織(DAO)という、従来の中央集権的な組織とは異なる新たな形態の組織が広がっていきます。
イノベーションのありかたも、組織の壁を越えて、様々な人がアイデアや技術を持ち寄り、交流、協働しながらイノベーションを起こしていく「オープンイノベーション」が主流になっていくことが想定されます。
垂直・ヒエラルキー型から水平・フラット型へと情報の創造と流通の仕組みが変わるなかで、協同・協働・協創という原理に立った草の根型の新しいイノベーション展開が期待されます。
一人一人のデータ主権
社会が分散・自律・直結をベースとする方向に変化していくにつれ、個々人が自分のデータを所有管理し、利用していくことが可能になっていきます。情報主体が中央集権的な「組織」から自律的な「個人」へとシフトしていくことが期待されます。
デジタルアーティストがNFTと運営プラットフォームを通じて自身の作品を直接販売し、中間業者を介さずに収益を得ることが可能になったように、様々な領域において自律分散的な新しい経済圏の創成が起こっていくことでしょう。
分散型の金融取引
「関係性の革命」はブロックチェーンやスマートコントラクト(人の手を介さずに契約内容を自動で実行してくれる仕組み)を用いた分散型金融(DeFi)に及ぶと想定されます。金融機関や仲介人という中間的な仕組みに頼らず、個人間で金融取引を行う仕組みです。その実現には様々な条件整備が必要ですが、ブロックチェーン、NFTを活用したデジタル地域通貨は社会実験を含め、今後の展開が期待されます。
岐阜県高山市の飛騨信用組合が提供している「さるぼぼコイン」、徳島県で使われている「にし阿波おどりコイン」などに注目したいと考えます。
まとめよりオープンで連携しやすい社会に向けた一歩
関係性の革命は、私たちの意識と行動を変容させ、分散・自律・直結、協同・協働・協創という原理に立った社会の実現につながっていくに違いありません。
NFTとブロックチェーンはそれほどに大きなパワーを内蔵しているのです。
東京大学工学研究科都市工学専攻を修了の後、公益財団法人九州経済調査協会や九州大学において長年、地域調査や産業政策・地域政策の立案に従事するとともに、数多くのまちづくりに参画している。