社会変革ツールとしてのNFT – 13歳のビジョンが未来を切り拓く
今年8月、衆議院議員会館で開催された「子ども世界平和サミット」に審査員として参加した。7か国から集まった11人の子どもたちが、未来の平和について情熱的にプレゼンを行う中、ひときわ印象に残ったのは、13歳の少女による提案だった。
彼女はこう言った。「絵を描くのが好きな子どもが、才能を活かして生活できる仕組みを作りたい」。その解決策として挙げたのが、NFTだった。自分の描いた絵をNFTとして発行し、それを流通させることで、誰もがデジタル上で作品を残しつつ収入を得られる未来を描いていたのだ。
その瞬間、私の心は震えた。なぜなら、これはまさに私たちが進めている「デジタル図書館PABLOS」のビジョンと完全に一致していたからだ。PABLOSは、公教育の探究学習を支援するためのプロジェクトで、図書館の利用メンバーシップをNFT化し、その販売で得た資金で運営を行っている。実証実験の段階で予想以上に多くの購入者が集まり、すでに実現への一歩を踏み出している。
NFTの可能性を理解することは、大人でも難しい。だが、13歳の少女が、自分の夢を実現する手段として、しかも明確なビジネスモデルとして提案してくるとは驚きだった。彼女の提案に対し、審査員たちも興味津々だった。中でもある著名な審査員が、「あなたの絵をいくらで売るの?」と尋ねた。彼女は少し恥ずかしそうに「500円です」と答えたが、その瞬間、審査員は即座に「それなら買います」と答えたのだ。
私はその瞬間、確信した。「未来はもう始まっている」と。500円という小さな金額かもしれない。しかし、その瞬間、少女の中には自尊心と自己効力感が芽生え、彼女の未来への無限の可能性が広がったのだ。
伝えたいこと
- 13歳の少女はもう知っている!「NFTの可能性」
- 創造性を殺す、パクリ企業文化の罪
社会的難問をあっさり解決する技術
NFTはデジタルアートや収集品の世界で注目されているが、その背後にあるブロックチェーン技術には、社会課題を解決する力がある。例えば、世界食糧計画(WFP)の「Building Blocks」プロジェクトでは、ブロックチェーン技術を活用し、シリア難民への食糧支援を効率的に、そして確実に届けることができている。
NFTの技術を使えば、教育の場でも大きな変革をもたらすことができる。たとえば、学生が作成した研究成果や作品をNFT化し、唯一無二の価値を証明することができる。そして、それを売買するマーケットプレイスがあれば、企業や団体は自社の理念や技術に共感する学生に、インターンシップや学習の機会を提供することが可能となるだろう。
実際、過疎の町で子どもたちが考案した移動式ハンバーガーショップが、大手チェーンによって模倣され、全国展開された例を見たことがある。これは「大人にアイデアを盗まれた」という経験として残るのか、それとも「自分たちのアイデアが評価され、支援される社会がある」と感じられるか、その違いは大きい。
私たちが取り組む「デジタル図書館PABLOS」も、公教育を支援する社会課題解決型プロジェクトだ。図書館の利用メンバーシップをNFT化し、その資金で運営し、探究学習をサポートしている。また、実社会とつながりながら学ぶためのリソースが不足している公教育に向け、無償で提供されるデジタルプラットフォームを構築し、専門家のコンテンツを届けている。実験段階で驚いたのは、「自分の経験や知識を公教育に役立てたい」とNFTを購入した多くの支援者が集まり、現在では支援者によるコミュニティが形成されつつあることだ。
NFT最大の過ち:新定義の提案
「なぜNFTを使うのか?」と聞かれることがあるが、私はこう答える。「信頼できるコミュニティを作るためだ」と。NFTは、全ての取引が透明化され、記録されるため、不正行為ができない。実際、PABLOSのNFT販売において、締切後に購入を希望する顧客がいたが、取引の透明性を守るために特例を認めなかった。これにより、信頼性のあるコミュニティを築くことができたのだ。
私はNFTをNon-Fungible Tokenではなく、「Nurturing Memories(記憶を育む)」「Fostering Creativity(創造性を養う)」「Transforming Goodwill(善意を形にする)」という三つの意味で再定義している。これらの視点を持つことで、NFTは単なるデジタル資産管理の技術を超え、教育、地域活性化、環境問題の解決など、多様な課題に対応するツールへと進化するのだ。
NFTは、私たちが大切にする瞬間や創作、善行を信頼できるブロックチェーン技術で保護し、次世代に確実に伝える手段である。そして、13歳の少女のビジョンが示してくれたように、NFTは未来を切り拓く力を持っている。
教育の未来は、すでに動き出している。
まとめ
- 社会課題の解決を加速するNFTの新定義
- デジタル図書館「PABLOS」が切り開く、Web3.0の社会実装
経営コンサルタント・作家・日本を代表する国際的マーケッター アルマ・クリエイション株式会社代表取締役 日本最大級の読書会である一般社団法人リードフォーアクション代表理事
神田昌典社会課題の解決を加速するNFTの新定義