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【農業×NFT】夕張メロンNFT ファンを魅了するフィジタル体験

高級果物として知られる北海道夕張市の特産品「夕張メロン」
高級果物として知られる北海道夕張市の特産品「夕張メロン」

デジタル会員証( 夕張メロンNFT )

プロジェクト名

夕張メロンNFT(夕張メロン「デジタルアンバサダー」)プログラム

売上枚数

約300枚

ポイント
  • 販売終了
  • 販売期間:プレセール 2023/1/14~(即完売)、一般セール 2023/1/24~2023/5/31
  • 価格:0.07ETH/個
  • 会員証NFT
  • コミュニティメンバー約300名(2022/12~)、Xのフォロワー10,000名超(2024/2/14現在)
プラットフォーム

MeTown株式会社専用サイト(確認はOpenSea)/ ふるさと納税

JA夕張市は、全国のJAとして初めてNFTを活用し、MeTown株式会社(東京都中央区)と共同で「夕張メロンNFT」を2023年1月に発売しました。これにより、約250人からなるデジタルアンバサダーコミュニティを立ち上げるなど、NFTを通じてファンの輪を広げる取り組みを進めてきました。このプロジェクトの仕掛け人で、JA夕張市管理課の係長を務める藤本尚弘さんに、お話を伺いました。

伝えたいこと「NFTは夕張メロンの認証シール」として使えると思ったことが出発点。デジタルの力を活用し、10年後をみすえたファン創造が動き出した。

デジタルアンバサダーを招いての収穫祭、東京でのオフ会など、ファンとの“温かい関係“は商品性や売買という次元を超えた新たな展開をみせています。

JA夕張市管理課の係長 藤本尚弘さん

JA夕張市管理課の係長 藤本尚弘さん夕張メロンNFTを通して、ファンの輪が広がっています。

夕張メロンNFTプログラムの概要

「夕張メロンNFT」プロジェクトは、JA夕張市公認の夕張メロン「デジタルアンバサダー」になれる会員証NFTを発行するプログラムで、夕張メロンのファンの輪を世界中に広げることを目的としたプロジェクトです。そのNFTには「夕張メロン1玉を受け取る権利」と「JA夕張市公認の夕張メロンのデジタルアンバサダーになれる権利(オンラインコミュニティに参加し限定で案内される特典や体験へアクセスできる権利を含む)」が含まれており、参加者はメロンを美味しく食べながら、夕張メロンを通じた地域活性化にも参画できるというデジタルとリアルを併用したプログラムです。

デジタルアンバサダーを招いての収穫祭で、メロン栽培を見学
デジタルアンバサダーを招いての収穫祭で、メロン栽培を見学

NFTプロジェクトを始めようと思ったきっかけと経緯

藤本さん 藤本さん

2022年頃からNFTの先進性に興味を持ち、その可能性にワクワクしていました。NFTのデジタルデータの唯一性を証明する特性が、夕張メロン認証シールと同じ役割を果たせるのではないかと気づきました。

毎年5月に夕張メロンの初競りが行われていて、最高では500万円の値が付きます。そして最高落札者には証明を渡しています。「誰がいついくらで落としたという証明」ですが、それをデジタル上でも渡せたら面白いんじゃないかと思ったのが、きっかけでした。しかし、そのアイディアをどう実現していけるのか分からなかった。

そんな時、2022年6月中旬、田中一弘さん(東京在住、以下田中さん)が投稿した、「夕張メロンのシールが本物であることを証明しており、その役割がNFTと似ている」というツイートを見つけ、すぐに連絡を取りました。7月初旬には田中さんは夕張市を訪れ、藤本さんと意気投合し、プロジェクト立ち上げに向けて一気に動き出しました。

2023年1月には、JA夕張市と田中さんが立ち上げたMeTown(東京)と共同で、JA夕張市公認の夕張メロンNFT「デジタルアンバサダー」プログラムを開始しました。

オンラインでお話を伺いました
オンラインでお話を伺いました

夕張市農業協同組合でNFTプロジェクトを提案したときの反応はいかがでしたか

藤本さん 藤本さん

反対意見が多かったです。

「NFTについての説明」と「ファンを増やす」という新しい2つのことを説明することがとても大変でした。NFTが売れなくてもリスクはほとんどなく、費用もそれほどかからないことや、メリットを説明しましたが、ちょっと分かり難い。

「10年後の事を考えて、NFTプロジェクトで夕張メロンのファンを増やした方が良い」という提案に対しても、「現時点で夕張メロンの供給が追いついていない中で、必要性を感じない」「新しい技術なのでよくわからないし不安」といった反対意見が多くありました。しかし「リスクはないんですよ」と説得を続けた結果、半信半疑の状態であったものの、「やってみる価値はある」という意見に傾き、プロジェクトはスタートしました。

その後、メディアで取り上げられるようになったことで、農協内部でも、「なんかあいつやっていること間違っていないかも」っていう風に変わっていきました。時間が経つにつれて、職員の中にも理解を示す人が増え、農家の方からも直接応援してくださる方や外部の仲間などもでき、これらの方々に支えられてここまでやってこれました。

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販売実績について

藤本さん 藤本さん

夕張メロンNFTは、約14,000円で販売され、888枚の中から約300枚が販売されました。約半数はTwitterを通じて知った方々によって購入されました(NFTはMeTownの専用サイトで販売されました)。

インフルエンサーがこのプロジェクトを取り上げてくいださり、情報が急速に拡散しました。また、VoicyやPodcast(音声配信アプリ)でも広がっていきました。その後採用されたふるさと納税でも10枚ほど売れました。

メロンNFTを購入したのはどんな方

藤本さん 藤本さん

購入者の約9割は夕張メロンを食べたことがない方々で、中にはメロンが苦手だったという方もいましたが、届いたメロンを食べてみたところ、食べられたという声もありました。NFTの購入が、メロンが苦手だった方や食べたことがない方に夕張メロンの美味しさを伝えるきっかけとなったのが印象的でした。

また、メロンNFTを購入したのは、約4〜5割がNFTを初めて購入する方々でした。これらの方々は、新しいことに興味がある方や、夕張市や夕張メロンを応援してくれる方々が主でした。

食べごろの夕張メロン
食べごろの夕張メロン

購入者の感想や反響をおしえてください

藤本さん 藤本さん

NFT購入者が参加できるコミュニティでは、約2名の農家さんが日々の農作業や除雪の様子、メロンの育成から収穫に至るまでの過程を投稿してくれていました。参加者は普段見ることができない実際の作業や夕張メロンの生長過程をリアルタイムで観察することができました。

メロンが実際に手元に届いたことで、「感動した」「美味しかった」という声が多く寄せられました。その喜びをSNSに投稿する方もいました。


夕張メロンの食べ頃を見極めるのは難しいと感じられることがありますが、夕張メロンは外皮が緑色から黄色に変わることで食べ頃が近づいていることを示します。黄色くなる程度によって、メロン内部の熟度や果肉の柔らかさが変化します。このような情報をコミュニティで共有していました。

また、購入者からはファンコミュニティ内に実際にメロンの写真が送られてきて、「この程度の黄色さで食べても良いですか?」と直接農家に尋ねるやり取りがありました。購入者からはこの新しいやり取りに対して、「とても良かった」との声が寄せられています。

収穫祭も開催しました。実際に夕張を訪れていただき、農家の方々と直接話をしたり、畑や検査場を見学して、イベントの締めくくりとしてバーベキューを楽しんだ後、参加者には夕張での宿泊を体験して頂きました。東京でのオフ会も開催しました。

収穫祭で夕張メロン検査場を見学している様子
収穫祭で夕張メロン検査場を見学している様子

これからの展開

藤本さん 藤本さん

コミュニティメンバーからNFTの販売を望む声が上がっているため、今年も販売を行います。

新たな取り組みとして、メタバース上でNFTを販売していきたいと考えています。また、声優さんとのコラボイベントを実施したり、NFTだけにとどまらず新しい試みを取り入れていきます。

最後に、夕張メロンNFTプロジェクトに対する想いを教えてください

藤本さん 藤本さん

夕張市の農家さんの99パーセントが夕張メロンの生産者で、向かう方向が同じなんです。職員も農家さんの方も団結しやすいと思ってます。何か行動を起こさなければならないと思っている人には、この取り組みは響いています。

10年後を見据えたとき、新しいファンを獲得していくことが絶対に必要だと感じています。そのためには、今から行動を起こすことが重要だと思っています。

多くの方々に夕張メロンを知っていただき、新たなファンを増やす取り組みが非常に大切です。夕張メロンのファンを増やすことは、夕張市の関係人口の増加にも繋がります。実際に夕張を訪れてくださる方々や、まるで家族のような関係性を築けている方々がいます。このように強いファンを継続して増やすことができれば、多様なつながりが生まれ、夕張メロンと夕張市に新たな価値と世界観が創造されます。

私は20代、30代の頃に農家の方々から多くを学び、育てられてきました。40代となった今、夕張市の農家の方々に恩返しをしたいという強い想いがあります。このプロジェクトを通じて、全国や世界に夕張メロンのファンを増やし、夕張メロンの価値を高め、地域社会に貢献することが、私にとっての恩返しです。

まとめ購入者の9割は夕張メロンを食べたことがない人々。これまで全く無縁だった人々に夕張のメロンが届く。そしてファン同士、ファンと生産者、ファンと夕張との交流が広がる。

こうした現実がたった一人の農協職員の発想と勇気ある行動から生まれていったことに感動します。次はメタバースでの販売をしたいとのこと。「10年後」に向けた夕張市JAの取り組みにこれからも注目していきたいと思います。

NFTPark. Writer - Yuko
著者:NFTPark. Writer - Yuko

NFTPark.編集部、記者・編集者。NFTがもっと身近になって、社会で広く使われていく未来を目指して、NFT事例のインタビュー記事、NFTに関するニュースを執筆。コミュニティマネージャーとしての一面も。